
今回紹介する映画は、巨匠スティーブン・ソダ―バーグ監督が手がけた最新作『プレゼンス 存在』。
本作の特徴はなんといっても「幽霊」目線を意識したカメラアングル。シンプルな物語ながらその新たなチャレンジにより、独特の雰囲気が漂うサスペンス・ホラーとして仕上げられました。
【概要】

ある屋敷に引っ越してきた一家に起こる不可解な出来事を描いたホラー映画。
『トラフィック』や『オーシャンズ』シリーズ、『コンテイジョン』など、数々のヒット作を発表してきたスティーブン・ソダーバーグ監督が作品を手がけました。
『キル・ビル』『チャーリーズ・エンジェル』のルーシー・リュー、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のクリス・サリバン、カナダ出身の新鋭カリーナ・リャンらがメイン機キャストを務めました。
2024年製作/84分/PG-12/アメリカ
原題:Presence
日本公開日:2025年3月7日
【監督・脚本】
スティーブン・ソダーバーグ
【出演】
ルーシー・リュー、クリス・サリバン、ジュリア・フォックス、カリーナ・リャン、エディ・メデイ、ウェスト・マルホランドほか
【あらすじ】
ある大きな屋敷に引っ越してきた4人の家族。一家は、10代の少女クロエが抱える過去の傷により、家族としてのつながりにひずみを生じていました。
そしてある日、クロエは家の中に自分たち以外の「何か」が存在していることを感じ撮ります。
その不審な「何か」は一家が引っ越してくる前からそこに存在し、家族が人に見られたくない秘密をいつも見つめていました。
母親、兄から疎ましく思われ、それが原因で父と母の関係も不仲となり、家族の中で肩身の狭い思いをしているクロエ。そんなそんな彼女に「何か」は親近感を抱きます。一
そして家族とともに過ごしていくうちに、「何か」は一つの目的を果たすための行動を起こします……。
【『プレゼンス 存在』の感想・評価】
「幽霊目線」という特殊アングルの意味を深く感じさせる物語

物語は1974年の映画『悪魔の棲む家』に登場したアミティヴィルの家を彷彿する表面の家を舞台に展開していきます。
恐らく多くの人が、劇中の独特なカメラ目線に注目してしまうことでしょう。宣伝の文句「全編『幽霊の目線』」がなければ序盤は何らかの違和感をおぼえるものの、物語が進んでいく中で徐々に目線は何らかの意志を持っているもの、つまり映像からは見えないもう一人の人物がこの景観に存在していることに気づかされます。
ドキュメンタリーチックにも見える視線、という意味ではPOVの新しい手法への試みにも見えてきます。さらに「幽霊」は当初越してきた家族とは関係のない者であるように見せながら、実は大きな接点があることを徐々に見せていき、最後に強烈に「ドキッ!」とさせるものへとつなげていきます。

映像視点からすると、最初に間延びしそうな印象を受けるところですが、展開としては非常にシンプルながらスムーズにまとめられています。実際に見ているとそれほどスピード感があるわけでもないにもかかわらず、かつ間延びする感もなくあっさりと終わってしまい、非常に綿密な物語作りがなされていることを感じさせます。
一方で物語にはほのかに社会的な問題を匂わせるところもあり、ギミックに頼らない映画作品としての質の高さを示しています。本作ではルーシー・リュー、カリーナ・リャンらアジア系の俳優陣をメインキャストに据えています。物語の展開はそこに社会課題的な要素を絡め、このキャスティングに対する強い意味を示しています。

「幽霊の棲む家に普通の家庭が越してきた」という単純な導入ですが、時間軸が進むに従いあらゆる要素が複雑に絡み合い、あるタイミングでふっと物語の要点を鮮明に示していきます。
そしてクライマックスにドキッとするシーンをいいタイミングに設置。ここは直感的な恐怖というよりはアハ体験的な、何もかもが鮮明となり、恐怖のポイントが実際に見えているところ以外の場所にあったことを気づかせ、見る側としては予想外の展開にショックをおぼえることでしょう。
そのポイントは、タイミング的には2007年の『パラノーマル・アクティビティ』を彷彿するものですが、その衝撃はある意味1999年の『シックス・センス』に似たショック感でもあります。
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