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【映画レビュー 特別編】ドラマ『エイリアン:アース』 初作の恐怖感を引き継ぎつつ新たな世界観を描いた「SFホラーの金字塔」前日譚

  • 執筆者の写真: 黒野でみを
    黒野でみを
  • 4 分前
  • 読了時間: 7分
(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu
(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

今回紹介する作品は、SFホラーの伝説的なフランチャイズといえる『エイリアン』シリーズ初のドラマ『エイリアン:アース』。


近年、映画作品としては『エイリアン:ロムルス』が公開され改めて注目を浴びている『エイリアン』シリーズ。一方でドラマ版のデベロップメントが進行していることが2020年に発表、約5年の歳月を経ていよいよ配信開始を迎えます。


本作は初作の背景となった2122年の、ちょうど2120年の出来事を描いたもので、『エイリアン』の前日譚となる物語。これまで公開された映画作品のエピソードにどのようにつながっていくのか、ファンとしては非常に気になる作品であります。


【概要】

(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu
(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

SFホラーの金字塔『エイリアン』シリーズ初のドラマ化作品。クリエイターにはサスペンスドラマとして高い評価を得た『FARGO/ファーゴ』や、『レギオン』等の海外ドラマシリーズを手掛けてきたノア・ホーリーが務めています。


また製作総指揮にはシリーズの生みの親でもあるリドリー・スコットが名を連ねており、『SHOGUN 将軍』や、人気シリーズ『一流シェフのファミリーレストラン』などを手掛ける米FXが製作を行っています。


主演を務めるのは、『ドント・ウォーリー・ダーリン』、ドラマ「シュガー」などのシドニー・チャンドラー。さらに『このサイテーな世界の終わり』アレックス・ローサー、ドラマ『マンダロリアン』のティモシー・オリファントらが共演を果たしています。


2025年8月13日よりFX、FX on Hulu、Disney+にて配信開始/アメリカ


製作総指揮

リドリー・スコット、デイビッド・ツッカー、ジョセフ・イベルティ、ダナ・ゴンザレス、クレイトン・クルーガー


【原題】

Alien: Earth


【出演】

シドニー・チャンドラー、アレックス・ローサー、ティモシー・オリファント、エッシー・デイヴィス、サミュエル・ブレンキン、バブー・シーセイ、デヴィッド・リスダール、 エイドリアン・エドモンドソン、アダーシュ・グーラヴ、ジョナサン・アジャイ、エラナ・ジェームズ、 リリー・ニューマーク、ディエム・カミーユ、モエ・バーエルほか


【あらすじ】


(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu
(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

2120年の地球、世界はプロディジー、ウェイランド・ユタニ、リンチ、ダイナミック、スレッショルドという5つの大企業によって統治されていました。そんな中、ウェイランド・ユタニ社の宇宙船が地球に墜落してしまいます。


宇宙船の中に格納されていたモノを回収するべく派遣されたのは、プロディジー社によって開発された、「人間の力をはるかに凌駕する身体能力」を持つ、人間とアンドロイドの<ハイブリッド>たち。


荒れ果てた廃墟のようになっている船内では、乗組員の「宇宙の暗黒から、5種の生命体を回収した」との証言と共に、“何か”が格納されたコンテナが発見されます。それは、人類が宇宙最恐の生命体と対峙する最悪の悲劇の始まりだったのです。


『エイリアン:アース』の感想・評価】

[ドラマの限界を超え、まさに『エイリアン』の恐怖感を再現!]

かつてゾンビ・ドラマとして大ブレイクした『ウォーキング・デッド』シリーズも、このジャンルにつきものな「残虐性」から最初は「『ゾンビ』を『ドラマ』でやるのか?」という点において、ファンに大きな驚きを呼びました。


その意味では、この『エイリアン』シリーズは『ウォーキング・デッド』という前例のおかげでそれほどの衝撃はなかったかもしれません。ただし、「伝説的」ともいえる『エイリアン』サーガを、どのように連続ドラマにするというのか?という点で大きな注目を集めました。


しかも配信を行うのは、ディズニープラス。「ディズニー」の冠で発表するわけですがら、余計に「どのようなドラマになるのか?」という点は気になるところ。映像の残虐性は差し置いても、どのような道筋を描いていくのか、『エイリアン』シリーズにどのようにつなげていくのか、そしてどのように『ディズニーらしさ』が見えてくるのかなど、ファンの中に芽生えた感情はある意味「混乱」であったかもしれません。


(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu
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「目指したのは、オリジナル版でおぼえた、観たら眠れなくなるあの感覚だ」クリエイター/製作総指揮を務めたノア・ホーリーは、本作についてこう語っています。


初作『エイリアン』で展開した、ノストロモ号における惨劇。本作の物語冒頭で見られる宇宙船マギノット号の船内デザインにはそのオマージュとも思える舞台が見られます。


また新たに登場するモンスターを含め、エイリアンが徐々に襲いかかり餌食にされる「あの」恐怖感がしっかりと表現されています。


本作のエイリアン登場シーンは、どこか見えないところから現れる、全景がハッキリしない映像、そして決定的な残虐シーンはわりにうまく省かれることで、直接的な残虐シーンよりもかえって不安感を猛烈に煽られ、恐怖に駆られていきます。


もちろん現代的な映像ならではの精巧な画質に置き換えられながらも、恐怖の印象はまさにあのまま、という雰囲気をおぼえるでしょう。


[寓話にも見える人物、物語設定より現代社会のメタファーを映し出す]

(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu
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また本作の革新的な点として、登場人物のユニークな背景、設定があります。


筆頭ポイントとしては、やはり<ハイブリッド>という存在。宇宙船マギノット号の墜落に対して捜索を担当することとなった彼らは、もとは病弱など様々な事情を抱えていた子供たちでした。


そんな子供を意識のみアンドロイドの「器」に移されたことで構成されたこの混在。そもそもこの「意識を移す」という行為自体の倫理性は、ドラマの全貌が徐々に明かされる中で多く指摘されていたポイントでありますが、一方で「彼らは体が大人だが、意識としては子供である」という点も非常に気になるところです。


まったく成長が追いついていない中で特殊能力を持ったアンドロイドと融合され、さらには宇宙船墜落というとんでもない現場への探索の任務を任せられるという厳しさ。



このことは、ある意味現代社会における「何も知らぬまま渦中に投げ込まれる若者」の生きづらさの象徴ととることもできるでしょう。


成長以外で身に着けることになったアンドロイドの体。そして大した訓練もなく惨事の現場に送り込まれる過酷さ。その「認められない」様子から彼らはどのように成長し、その存在を確立していくのか。


『エイリアン』~『エイリアン4』は主人公リプリーを「強い女性」として投影し、会における女性の存在意義を問うような一面がありましたが、その意味で本作には「女性」から「子供」、「若者」へと新たな論点を提起している印象が見えてきます。


シドニー・チャンドラーが演じる主人公ウェンディーのファーストインプレッションには、どこか2001年のフランス映画『アメリ』を思い出させるような印象もあり、物語を寓話的なイメージにする要素とも見え、その裏に現代実社会の様々な一面を比喩するように描いているところに、ある意味「ディズニーらしさ」を感じるところもあります。


(C)2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu
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またこの論点の背景にある大きな起因要素として描かれた「五つの大企業」が支配するという未来の状況にも興味深いものがあります。


五つに分断された世界におけるせめぎ合い。企業同士の争いはどこか国同士の戦争より残酷。「企業」という立場が一見健全に見せながら、裏を返せば「欲にまみれた人間同士の争い」が戦争以上のストレートな醜さを見えてくるわけで、マクロ世界の力のせめぎ合いのような構図が感じら、『エイリアン』サーガで暗に描かれた人間社会の暗部のイメージを広げた印象をおぼえてくるでしょう。


その「醜さ」の象徴的な存在として本作では、サミュエル・ブレンキンが演じるプロディジー・コーポレーションの人間CEOボーイ・カヴァリエが強い印象を放っています。いわゆるステレオタイプ的な「支配者」イメージとは異なり、そのたたずまいからどんな人間模様が見えてくるのか、本作の要注意ポイントといえます。




ある意味『エイリアン』サーガを再定義する物語ともされている本作。


これまでウェイランド・ユタニ社一強で描かれていた物語に対し、地球という存在がどのような形であったかを深掘りしている点において、世界観が広がった物語となった印象をおぼえます。


ウェンディーを中心とした物語は、いかにサーガへつながっていくのか?その結末まで目が離せない物語であるといえるでしょう。



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