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【映画レビュー】『マッド・マウス ミッキーとミニー』 パブリック・ドメインを狙い発した強烈なメッセージ

執筆者の写真: 黒野でみを黒野でみを

更新日:3月13日

(C)MMT LTD 2024. All Rights Reserved.
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今回紹介する映画は、あの世界に愛されたキャラクター、「ミッキーマウス」がテーマ。アンディ・パーマー監督によるホラー映画『マッド・マウス ミッキーとミニー』であります。


1928年に公開されたウォルト・ディズニー社の短編アニメ『蒸気船ウィリー』が、2024年1月1日に公開から95年経ったことで、著作権が切れパブリックドメイン化したことを受け、作られたというこの物語。


「ミッキーマウス」が人を殺しまくるという強烈なテーマの作品ですが、物語の根底を理解することでより深いメッセージ性、裏に隠された心理を知ることができる、製作者のクレバーさが感じられる作品であります。


 

【概要】

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ミッキーマウスを凶悪な殺人鬼として描いたスプラッター・ホラー。


『デスNS インフルエンサー監禁事件』のジェイミー・ベイリーが監督を務めました。また同作で脚本を務めたサイモン・フィリップスが本作でもタッグを組んでおり、脚本、出演を果たしました。

主人公アレックス役を『エア・ロック 海底緊急避難所』のソフィー・マッキントッシュが務めています。


2024年製作/94分/R15+/カナダ

原題:The Mouse Trap

日本公開日:2025年3月7日


【監督・脚本】

ジェイミー・ベイリー


【出演】

ソフィー・マッキントッシュ、マッケンジー・ミルズ、マイクサイモン・フィリップス、カラム・シウィック、ベン・ハリス、ダミール・コビッチ、ニック・ビスクペック、アレグラ・ノシタ、ケイリー・スタイルズほか


 

【あらすじ】

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21歳の誕生日を迎えるアレックスは、当日にアルバイト先のゲームセンターで店長から残業を頼まれ、夜遅くまで働くことになってしまいます。


ひとりきりの店内。そこに不気味な人影を目撃し恐怖心を募らせるアレックスでしたが、その正体は彼女のために企画してくれた誕生日祝いのサプライズパーティを催す旧友たち。

それを知って彼女はホッとします。


ところがその一方で、彼ら以外の怪しげな人物が場内に現れ彼女たちを襲い、その目的も分からないままに次々と血祭りにあげていくのでした……。


 

【『マッド・マウス ミッキーとミニー』の感想・評価


1.「物語の前提を理解する必要性」敢えてチープな雰囲気を漂わせる意図

(C)MMT LTD 2024. All Rights Reserved.
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全体に漂うチープな雰囲気。何も考えずにこの作品を見ると、多くの人は「単なるB級作品」などと決めつけてしまい、低い評価をつけてしまうかもしれません。実際、批評家陣からはかなり低い評価を受けている傾向にある様子です。


その意味で、本作は作品を見る前に一つの理解をおこなった上で作品を見る必要があるともいえます。


その理解とは、「ミッキーマウス」というキャラクター、ディズニー作品にまつわる物語である、ということ。このことは、オープニング時にまるで『スター・ウォーズ』の初作のオープニングで示された解説文の表現をもじったような導入で示されているもので深く感じ取ることができるでしょう。


また本作の原題は『The Mouse Trap』ですが、実は2024年の初公開の際、原題は『Mickey's Mouse Trap』であったものの、以後現在のタイトルに変更されました。


オープニングの解説文といい、このタイトルの変更など、「ミッキーマウス」というキャラクター自体というよりはこのキャラクター、フランチャイズが社会に与えたさまざまな影響を、ある意味斜め上の視点から眺めた上で作り上げたという方向性が強くうかがえるところであります。



ホラージャンルとしては、ある意味憑依系ともいうべきホラーでしょうか。細部の作りには、その意図は見えないにもかかわらずどこかコメディーっぽい雰囲気が漂っていますが、その安っぽさには、なにかを狙ったような意図が見えてくるようでもあります。


そこにはこのキャラクターのパブリック・ドメイン化を狙って作ったテーマであることが強く感じられます。物語で出てくるハプニング、展開には、まさにそれをにおわせるギミックがあちこちに仕掛けられていることが見えてきます。


「ミッキーマウスのマスクを被った連続殺人鬼」をどのように描くか、がこの作品のポイントですが、そこにはどちらかというとグロテスクさ、ホラーというよりは風刺的、批判的なメッセージ性を非常に強くおぼえさせるものであります。



2.敢えて作った「安っぽさ」がもたらすメッセージ性の強調性

本作の監督、脚本は『デスNS インフルエンサー監禁事件』のジェイミー・ベイリー、サイモン・フィリップスによるタッグ。


『デスNS インフルエンサー監禁事件』は、インスタグラムで「いいね!」を多く獲得する一人の女性が、謎の男に誘拐・監禁され遭遇する恐怖の出来事を追う物語でありますが、その根底にはやはりSNS至上主義的な現代の問題提起的メッセージを、明確に示しています。


この作品もどこかチープな雰囲気が漂う作品であり、このタッグが作り出す作品の、一つのスタイルではないかとすら思える作風であります。「もっとうまく、クオリティーの高い作品は作れるのではないか」と思わせるほどの安っぽさでありますが、この安っぽさがあるからこその、批判的なメッセージは余計に鮮明になってくるようにも感じられます。


(C)MMT LTD 2024. All Rights Reserved.
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本作にもこの雰囲気はそのまま受け継がれているようなイメージ。


このチープさにより「ミッキーマウス」が殺人鬼、というよりは「ミッキーマウス」を構成するさまざまな要素が若者にダメージを与えている、みたいな奥深いところにある真理を感じ取ることができます。


「ミッキーマウス」というポップなキャラクター、そしてこれにまつわるスプラッター・ホラーというキャッチーな柱がありながらも、意外に見るためにはそれなりの理解が必要となるなどハードルの高さも見えてくる作品であるといえるでしょう。

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